◆除隊軍人専門の建設組織に配置

取材協力者によれば、当局は今年から地域別または兵種別に、除隊軍人による「突撃隊」を作り、咸鏡北道内の主要建設に動員するという方針を立てた。これはすでに除隊する軍人たちに通知され、関連行事も実施する予定だという。取材協力者は詳細を次のように説明する。

「今年除隊する兵士たちは、分散配置、『無理配置』をせず、道、市、郡ごとにまとめて新たな『突撃隊』に配置する。そこには『党細胞』も置く。(除隊軍人だけで)1つの作業班のような組織にするそうだ」

※突撃隊 国家的な建設プロジェクトに動員される建設土木専門組織。服務期間が3年程度の「常設突撃隊」と、職場や党員などからプロジェクトのために選抜される「臨時突撃隊」がある。

※党細胞 朝鮮労働党の末端基層組織。5~30人程度の党員で構成される。 少し説明を加えよう。除隊軍人で労働党に入党した者は、配置された職場の党組織に所属していたのだが、今年から新たに作られる「突撃隊」には別途に党組織ができるので、そこで党員として統制を受けることになるというわけだ。

また新たな「突撃隊」は、縁故のない土地ではなく親が住む故郷付近に作ることになったそうだ。だが、本人の意思や希望を無視して国が若者の進路を決めるという点では、これまでの「無理配置」の延長線上にあるというしかない。

◆親たちは戸惑い

このような除隊軍人の配置政策の転換は予期せぬものだったようで、除隊を控える息子を持つ親たちは戸惑っているようだ。協力者は次のように述べる。

「知人が、息子が今年除隊するので職場を探していたところ、『茂山郡除隊軍人突撃隊』、または『速度戦青年突撃隊』のような組織を作るので、(息子は)故郷に送ると、当局から連絡があり当惑している」

息子が故郷に戻ってくるのは朗報に違いないが、軍生活の延長のような「突撃隊」に配置されるのではたまったものではない。親たちはそれを避ける方法を模索しているのだという。大学入学を認められれば、「突撃隊」送りは回避できるので、入学推薦を受けるための賄賂の工面に無理して借金をする親もいるという。

今年から始まる新しい措置は、除隊軍人の不良行為を減らし適応を助けるものになるだろうか。注目される。

なお、アジアプレスでは、除隊軍人の新しい配置政策について、茂山郡以外の地域で確認できていない。

アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

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