市営住宅2棟で露出した吹き付け材から基準(重量の0.1%)超のアスベスト(石綿)が検出されたと発表した大阪・堺市は、じつに3回にわたって報告書の記載を見落としていた。市は計20カ所で空気を測定し石綿飛散はなかったと強調するが、実際には過去の石綿飛散の可能性を明らかにしていない。(井部正之)

見落とされていたアスベストを含むバーミキュライト吹き付け材が確認された塩穴団地1棟の外観(井部正之撮影)

高リスク石綿「3度」見逃しと発表

10月6日の発表によれば、吹き付け材に石綿が含まれていたのは、1975年竣工で14階建て(195戸)の塩穴団地1棟(同市堺区協和町)と1974年竣工で11階建て(80戸)の協和町中団地4号館(同)。各階の共用廊下と屋内階段室の天井すべてに使用されていたほか、協和町中団地4号館では1階電気機械室の天井からも見つかった。石綿の使用面積は塩穴団地で計2356.9平方メートル、協和町中団地で計1373.1平方メートルに上る。

市によれば、2017~2019年度に市営住宅の仕上塗材の石綿調査を実施した。今回の2棟は2019年度に石綿の有無を調べる日本独特の定性分析法「JIS A 1481-2」で基準超のクリソタイル(白石綿)を検出していた。

じつは白石綿を検出した吹き付け材は、いずれも吹き付け石綿と同じくもっとも厳格な対策が必要になる「石綿含有吹き付けバーミキュライト(ひる石)」だった。分析結果報告書には、はっきり「バーミキュライト含有」と記載されていた。

重大なのは、市側が3度にわたってその記載を見落としていたことだ。

まず2020年2月に調査結果の報告書をとりまとめた際、市の担当者が「一般的な仕上塗材との思い込みから、そのことに気付かなかった」と説明。ただし当時は、吹き付け施工された仕上塗材が吹き付け石綿と同じ扱いだったため、吹き付け石綿「相当」として対応することができた。

あまり知られていないことだが、翌2021年4月施行の大気汚染防止法(大防法)や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)改正で、仕上塗材が石綿を含む成形品と基本的に同じ扱いに「規制緩和」された。市はその際に改めて分析結果報告書を見直したが、「確認が十分でなく」、再び「バーミキュライト含有」の記載を見落とした。

そうして規制緩和にともない管理レベルが落とされた。吹き付け石綿が露出している場合、定期的な目視点検だけでなく、空気中の石綿濃度測定も必要だ。「堺市公共建築物におけるアスベスト含有建材の維持管理マニュアル」でも定められていることだが、管理レベルが落とされた結果、履行されなかったことになる。

その後、市では吹き付け石綿の見落としが相次ぎ、2021~2022年度に吹き付け石綿を再調査し、新たに9施設で見落としが判明した。本来ならこの再調査で今回の2施設についても見つかっていなければならなかったはずだが、「法改正時に確認済みとの認識から」3度見落とされることになった。

結局、4月28日、2棟の建て替えに向けて過去の調査報告書を精査していた際に「バーミキュライト含有」の記載に初めて気づき、吹き付け石綿などと同等とようやく認識したという。

市は5月下旬に2棟の屋内共用部で計20カ所(塩穴団地12カ所、協和町中団地8カ所)で空気を測定し、いずれも検出限界の空気1リットルあたり0.056本を下回っていたとして、石綿は「検出されませんでした」と発表に記載した。

吹き付け石綿や保温材などが露出している場合、除去などの措置や労働者の石綿ばく露防止義務が石綿則(第10条)で定められている。しかし2021年4月の規制緩和にともない管理レベルを落とした結果、石綿飛散の有無が確認されなくなり、事実上、約5年間にわたって安衛法違反の管理だった可能性がある。

実際にはそれだけではなかった。

発表には記載がないが、筆者の取材に対し、市は2005年度の吹き付け石綿調査でも今回の2棟におけるバーミキュライト吹き付けが当時の分析対象から抜け落ちていたことを認めた。

自治体によっては、2006年度や2008年度にも再調査している場合があるが、堺市では、はっきりしないという。つまり、見落としは少なくとも4回ということになる。

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