24時間体制の国際放送では、外国人スタッフに乗り合いの送迎サービスを提供している。女性スタッフには必須のサービスだ。写真はテヘラン市街の自動車道(2006年撮影)

24時間体制の国際放送では、外国人スタッフに乗り合いの送迎サービスを提供している。女性スタッフには必須のサービスだ。写真はテヘラン市街の自動車道(2006年撮影)

 

◆夫婦でアルバイトを始める(2)

イラン国営放送の短波放送「ラジオ日本語」で働き始めたことは、私と妻のこれまでの生活に程よい緊張感と刺激を与えた。
私は、息の詰まりそうな大学院生活から離れた、もうひとつの居場所を見つけた思いだった。妻はその頃、アパートの大家さんであるKさんの大学生の息子さん と、日本留学を控えた女子大生に、自宅で日本語の個人授業を行っていたし、自分で暇を見つけては外出していたが、私と違って何か目的があってイランに来た 訳ではない。アルバイトとはいえ、この地で職を得たことは、彼女にとって大きな励みとなった。

面白いチャンスが転がってくるものだねぇ、と妻はとても喜んでいた。もともとカラオケ好きで、声もよく通る妻は、アナウンサーの仕事に対しても不安な表情一つ見せなかった。
一方、私にとって翻訳の仕事はかなりハードルの高いものだった。大学院での勉強のおかげで、「略奪」とか「占領」とか「目潰し」といった歴史用語はよく 知っていたが、もちろんニュースの翻訳では、政治、経済、文化、学術、そしてイスラムのすべてにおいて語彙力が必要だ。それに職場での翻訳は、決められた 時間内で片付けていかねばならない。

職場では、翻訳者同士、互いに翻訳した原稿を交換し、校正をしあう決まりになっている。当然、たっぷり修正の入った原稿が戻されてくる。文章を直すのも、直されるのも、あまり楽しい作業ではない。

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