コロナ対応の激務の間につかの間の休息を取るテヘランの女性看護師たち。国営IRNA通信より引用(撮影ハサン・シールヴァーニー)

◆感染対策不満で住民抗議、治安部隊も出動

春分の日を1年の幕開けとして祝うイランの正月ノウルーズ。例年、新年の準備で市場は賑わい、3月21日の新年の祝祭では、親戚や友人が互いに家庭を訪問し、年明けと春の到来を祝う。だが今年はそうした様子も見られない。新型コロナウイルスが世界的な感染を見せるなか、イランでは感染者があいつぎ、深刻な事態となっている。(大村一朗/アジアプレス)

イランでは先月、保健副大臣が新型ウイルスに感染するなど、新型コロナウイルスが猛威を振るっていることが報じられてきた。イラン保健省は国内の全検疫所からの報告として、国内の最新の新型コロナウイルス感染者数を発表した。3月29日時点での感染者数は累計3万5408人、死亡者数2517人。感染者数も死亡者数も1週間でおよそ50%ずつ増加している。死亡者数の数では世界で4番目に多く、深刻化しているとみられる。

首都テヘランに住む日本人女性に聞くと、「知り合いの知り合いにコロナの死者が出たという話をよく聞くようになった」という。

イラン中部イスファハン州の町ナーインに住む知人から筆者に、こんなメッセージが届いた。

「医療器具が不足し、町ではすでに何人か死者が出ている。ほとんど家にこもっている。早くウイルスが消え去って、普通の生活に戻ってほしい」。

日本に住むイラン人のひとりは、イラン国内の取引相手が新型コロナで亡くなったと話した。イラン人にとっては、感染はニュースではなく、死が迫っている身近な問題と受けとめられている。

住宅地に隣接するモスクの墓地に新型コロナの犠牲者が埋葬されることに抗議する男性の動画。ギ―ラーン州マースーレで。MahlzarYaar/VOAより引用

◆モスクが感染爆発の温床に?

イスラム教徒がほとんどのイランでは、日々の礼拝時に毎回、丁寧に手を洗ったり、鼻をすすぐ。これはある意味で感染症予防にもなるのだが、金曜日に大学やモスクなどで行われる集団礼拝は、閉鎖された空間に多数が密着し、長い時間を過ごすため、感染爆発の温床となった可能性は否めない。

またシーア派によく見られるような、聖廟で聖遺物に参詣者が口づけをする行為も同様の危険をはらむ。「信仰か感染防止か」の議論も出るなか、一部の聖廟が閉鎖されるなどしている。

多くの巡礼者が訪れるイラン中部の宗教都市コムでは、マアスウメ廟が閉鎖されたことに抗議し、一部の巡礼者らが暴徒化して廟の門を破壊した。イラン東部のシーア派最大の聖地マシュハドでも、イマームレザー廟の入場門が巡礼者によって破壊される事件が起きている。

混乱が広がるなか、国内で撮影されたとみられる新型コロナ関連の動画も複数出回っている。カスピ海西岸ギーラーン州ターレシュでは、感染者搬入に抗議する市民と、これを警戒して治安部隊が投入された映像が出た。先月22日、この町の病院が州の検疫センターに指定されたことで、感染者が町に搬送されてくることに住民が怒りを爆発させたようだ。