6 《モーイン陣営の闘い》
『今回の参戦の主な目的は、自分たちの国が今どうなっているのか気づいていない50パーセントのイラン人を守るためである』

モーイン氏と、その支持母体であるイラン・イスラム参加戦線やイスラム革命戦士協会は、投票ボイコットではなく、あくまで選挙で勝ち、現体制下つまり憲法の枠内で政治を変えてゆくことを選んだ。かれらの指摘するポイントは、投票ボイコット派と同様、選挙で選ばれない個人、機関へ権力が集中していることへの批判である。

モーイン支持集会を後にするイブラヒム・ヤズディ元外務大臣。人の輪で暴徒襲撃に備える若者たち

『護憲評議会の干渉と、行政が法を実行できないことが憲法の抱える問題である』

モーイン氏のこの発言は、ハタミ政権が断念した『大統領権限強化法案』の趣旨をまさしく受け継ぐものであるが、かれらは一歩進んで憲法のタブーにも言及する。

『自分はイスラム憲法に忠誠を誓うが、それは憲法に意見を持っていないということではない。憲法にはあいまいな点がいくつかある。そのひとつに、大統領の権力範囲とその責務とのつり合いの問題がある』

モーイン氏が〈急進的改革派〉と呼ばれる由縁は、イスラム憲法のタブーに果敢に挑戦するからだけでなく、『イラン国民は独裁者を必要としていない』などといった過激な発言にもよる。

モーイン候補の支持集会でボランティアをしているコンピューター技師の青年(29)はモーイン氏のこうした発言も支持すると言った。

「宗教指導者は政治に関わらないでほしい。宗教的に暮らしたい人はそうし、そうでない人はそうする自由があるべきだ。父親たちの世代はイスラム革命の理念を望んだかもしれないが、俺たちは違うんだ」

イランでは、名指しで最高指導者を非難することは禁止されている。しかし、『独裁者』が誰を指しているかは明白だ。モーイン支持者はその報いを共有しながらここまで闘ってきた。

「みんな襲撃を恐れて早めに会場を出るのさ」

スタジアム入口で警備にあたっていたボランティア(モーイン支持者はすべてボランティア)の会社員男性(39)は、演説半ばで出口へと向かう人の流れを指差して言った。これまでモーイン候補の支持集会はたびたび暴徒の襲撃を受け、頭蓋骨骨折の大怪我を負った支持者もいる。この会社員も一昨日路上で襲われ、足に痛々しい傷を負っていた。
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