テヘラン大学前の路上に設けられた投票箱

その日の夕方、開票結果が明らかになった。投票率は62%と予想を上回り、得票率はラフサンジャニ師21.8%で首位、保守強硬派の現テヘラン市長アフマドィネジャード氏20.1%、穏健改革派のキャルビ前国会議長18・2%、そして上位3位を占めると予想されたカリバフ前警察庁長官と改革派のモーイン元科学相はそれぞれ14.5%と14.3%に留まった。

キャルビ師とモーイン氏の両方が決戦投票行きを逃したことで、改革派陣営の落胆は大きい。特に終盤で突如2位から3位に転落したキャルビ陣営の落胆と疑心は激しく、『票の入れ替えがあった』と不正を訴え、最高指導者ハメネイ師に票の再集計を求める要望を提出した。

両者は声明のなかで、アフマディネジャード氏に近い保守派動員組織バスィジや革命防衛隊、また保守派寄りの選挙監視機構の干渉があったと指摘。モーイン氏も『弾圧』と『ファシズムの危険』があると警告した。

護憲評議会は20日、キャルビ陣営からの要請を受け入れ、テヘランなど主要4都市の投票箱を無作為に100個選び、その開票結果を調査した。しかし、不正行為の証拠となるようなものは何も見つからず、これによりラフサンジャニ師とアフマディネジャード氏の決戦投票が24日に行われることが決まったのだった。

日刊紙「エクバル」を訪ねると、エクバル紙の文化部部長であり風刺画家のハディ・ヘイダリ氏が迎えてくれた。建物には受付の男性と、他一名しか見当たらない。エクバル紙と、キャルビ師寄りの日刊紙「オフトーベ・ヤズド」は昨日発禁処分を受けていた。キャルビ師が最高指導者ハメネイ師に出した、票の再集計を嘆願する手紙に、ハメネイ師の息子が特定の候補を支持していたことへの批判が含まれ、それを全文掲載したかどで発禁処分を食ったのだ。発行再開の目処はまだ立っていないという。

「改革派は(ラフサンジャニ師を含めて)全部で1600万票、保守派は1200万票。改革を求める人間の方が多いことははっきりしているんです。結局、彼ら保守派はアフマディネジャードに組織票を集めることに成功したんですよ」

改革派はキャルビ師とモーイン候補で票が真っ二つに割れてしまった。一方、保守派はアフマディネジャード氏に票を集めることに最後の最後で成功した。その方法はバスィジや革命防衛隊を全国に放って金品をばらまいたとキャルビ師が批判しているが、真実は明らかではない。だが、仮にそうした不正があったとしても、保守派1200万票は組織票700万票に比べて多すぎる。

「我々は決戦投票に向け、党を挙げてラフサンジャニ師を支持することに決めました。もちろん、本心じゃない。でも、アフマディネジャードを当選させるわけにはいかないんです」

―ラフサンジャニ師が当選し、もし彼の内閣にモーイン氏や参加戦線党首レザー・ハタミ氏が招かれたら、受けますか?

「受けますよ。党をあげて支援する以上、ラフサンジャニはそうせざるを得ないでしょう。政治ですから」

経済自由化を求めるラフサンジャニ師を大統領に、改革派からは大物人権派が閣僚に加わる。あるいはそれも悪くないかもしれない。
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