リ・ハナさん日本入りした脱北者として初めて大学生となった。写真:金慧林

リ・ハナさん日本入りした脱北者として初めて大学生となった。写真:金慧林

◆亡父は長崎生まれの在日二世

本は、大学入学を前に書き始めたブログをまとめたもの。大学生活のこと、故郷や生い立ち、家族の思い出、そして北朝鮮に対する思いも率直に綴った。大学生活に葛藤するハナさんにとって、ブログは本音を吐ける場所でもあった。友情、恋愛、ファッション。時にはお酒も飲み、ストレス発散は一人カラオケ。そこにあるのは等身大の若者の姿だ。

辛いことも多い。しかし「日本に来てよかった」とハナさん。ここには自分のルーツがあるからだ。とりわけ年を重ねるごとに父を思うようになったという。ハナさんたちが脱北するより前、40代半ばで病死した。寡黙な人だったが、あるとき見た「帰国」前の写真には笑顔でおどける若き父がいた。父は最後まで「帰国」を拒んでいたという。父がなぜあれほどいつも暗い表情ばかりしていたのか。いま日本で「道を選択できる」自分と重ねずにいられない。
自立し恥ずかしくない自分になったら、父の生まれ故郷五島列島を訪ねたい。そしていつか北朝鮮との往来が実現したら、日本で出来た家族と共に、父の墓前に参りたい。

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