辛淑玉さんは、中国の延辺で出会った北朝鮮から逃れてきた子どもたちの夢について語る。(左:辛淑玉さん、右:リ・ハナ/撮影:玉本英子)

辛淑玉さんは、中国の延辺で出会った北朝鮮から逃れてきた子どもたちの夢について語る。(左:辛淑玉さん、右:リ・ハナ/撮影:玉本英子)

 

◆「脱北者」に対する在日コリアンの反応

ハナ:私は北朝鮮の中に住んでいたときは、北朝鮮という言葉も聞くこともなかったし、中国にも5年いましたが、中国でもなかなか北朝鮮のニュースが報道されることはないんですよね。自分が脱北者で、身分を隠さないといけない立場にあって、とにかく距離を置こうと、そこから逃れるために日本へ来ようとした部分があるのだけど、日本では毎日のように、たくさんの北朝鮮のニュースが流れ、しかも大阪にはこんなに在日コリアンがいっぱいいて、「なんだここは?どうなっているの?」って(笑)。最初はすごく驚きましたね。これだけ朝鮮語が通じるなんて...。でも在日コリアンが話す朝鮮語はちょっと違う。

辛:変でしょ?化石のような朝鮮語なんだよね。昔のままで止まっているよね。
ハナ:私が脱北者ですって言うと、在日コリアンの反応も分かれるんです。「よく来た」って言ってくれる人もいるけど、好奇心が旺盛だから、すごいもう、いろんなことを聞いてくる人もいます。私のところに寄ってこない人もいます。

私の耳元で、「実はね。私の親戚も向こうへ行ったんだよ。でも誰にも言わないでね」とか。そういう人もいて、ここは日本だけど、日本じゃないみたいな(笑)。私はそれからちょっとずつ日本語を覚えて、在日コリアンとか帰国事業って何だとか、子供の頃、家でほとんど教わったことがありませんでした。うちの家族は日本人じゃなくてルーツは韓国の済州島なんだって、ぼやっとは分っていたんですけど、なぜ、どういう経緯で日本から来たというのも誰も教えてくれないので知らなかった。それが日本に来てちょっとずつ分るようになっていきました。(つづく)

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辛淑玉(シン・スゴ):東京都生まれの在日コリアン3世。人材育成コンサルタント会社代表。マイノリティやフェミニストの立場からの人権問題についての著作や発言多数。東日本大震災後、宮城県や福島県などの避難所を取材、女性や災害弱者の視点で感じた経験を、講演などを通して伝えている。

リ・ハナ:北朝鮮・新義州市生まれ。両親は日本からの「帰国事業」で北朝鮮に渡った在日朝鮮人2世。中国に脱出後、2005年日本に。働きながら、高校卒業程度認定試験(旧大検)に合格し、2009年、関西学院大学に入学、2013年春、卒業。現在関西で働く。今年1月刊行の手記「日本に生きる北朝鮮人 リ・ハナの一歩一歩」は多くのメデイアに取り上げられた。
■ 日本初の脱北女子大生 3月卒業へ
■ <脱北者に聞く北朝鮮>リ・ハナさんインタビュー(全7回)
■ 【2013年1月刊・書籍】日本に生きる北朝鮮人 リ・ハナの一歩一歩 (リ・ハナ著)

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