絵本「優しいあかりにつつまれて」。阪神、そして東日本大震災を経験、同じ悲しみを持つ2人の母親が、失った子どもへの思いを託した。

絵本「優しいあかりにつつまれて」。阪神、そして東日本大震災を経験、同じ悲しみを持つ2人の母親が、失った子どもへの思いを託した。

◆東日本大震災で息子を失った母親との出会い~子どもたちが生きた証を絵本に

震災から10年。はじめて同窓会にも出席した。息子しょう君を失ったたかいさんは一歩ずつ前を歩きはじめた。

ところが2011年3月11日、東日本大震災が発生。衝撃的な映像に、ようやく出来はじめた「心のかさぶた」がひっぺがされた。「あの日」がフラッシュバックし、再び家から出られなくなった。そして、しばらくやめていたカウンセリングを再開した。

カウンセラーは、治療の一貫として「何か目標を持つこと」を勧めた。たかいさんが考えたのは、娘に晴れ着を用意するように、しょう君にも二十歳の贈り物をすること。「しょう君の生きた証し」として絵本作りを思い立った。

そのころだった。仙台市の竹澤さんが、たかいさんのブログに出会ったのは。竹澤さんは宮城県名取市閑上の実家が津波にのまれた。預けていた生後8か月の雅人君が両親と祖母と一緒に流された。雅人君と母はいまも行方不明のままだ。

どう生きていけばいいのか。子どもを亡くした親の手記をネットで探した。出会ったのがたかいさんのブログだった。

メールのやりとりから交流が始まった。名取市の慰霊祭へはたかいさんと、娘のゆうちゃんも参加。今年の1月17日は、たかいさんたちが毎年参加している神 戸市・東遊園地の追悼行事に竹澤さん一家が訪れた。震災後に授かった雅人君の妹(1)も一緒だった。娘に雅人君のことをどう伝えたらいいか、考えあぐねて いた竹澤さんに、たかいさんが「一緒に絵本を作りませんか」と背中を押したという。

絵本「優しいあかりにつつまれて」にはたかいさんの「二十歳になったあなたたちへ」、竹澤さんの「いっしょに」の二編を収録した。イラストは双子の イラストレーター、ひらたゆうこさん、ひさこさん。たかいさんは、ゆうちゃんの成長の軌跡をエピソードとともに綴った。かつて、きょうだいを亡くした子ど ものための本を探したが、なかなか見つからなかった。「絵本がその一助になれば」と願っている。

現在、大学2回生になったゆうちゃんに、しょう君の記憶はない。少し前、ホームビデオに映る自分たちを母娘で見た。そのときから「会いたい」気持ちはより 強まったという。成人記念の家族写真には、しょう君の写真も一緒に収まった。家の仏壇には、成人したしょう君のために、ビールや日本酒も供えられた。

【栗原佳子 新聞うずみ火】

※絵本「優しいあかりにつつまれて」は1600円(税別)。
詳しくは「オフィス優しいあかり」のHPをご覧ください。
http://yasashiiakarinitutumarete.web.fc2.com/

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