◆市町村に丸投げ

今回の法律で、介護保険制度はどのように変わっていくのか。大きく分けて3点ある。

まず、介護の必要度が比較的軽い「要支援1,2」の訪問介護とデイサービスを市町村の地域支援事業に移すこと。

これら要支援者は150万人。要介護状態より軽いとはいえ、健常者と比べればケアが必要である。

現在は、介護保険の予防給付事業として、調理や掃除などのサービス内容も、自己負担も全国一律だが、それを来年度から3年程度で段階的に移すという。

つまり、国の介護保険制度から切り離し、市町村の事業に丸投げするのである。

先の国会で安倍総理は「地域のニーズにあった多様なサービスを提供していくために必要だ」と説明したが、野党議員は「市町村事業になると、財政力や介護の担い手などが多いか少ないかによってサービス内容や負担金に格差が生まれるのではないか」と追及した。

認知症の家族を抱える公益社団法人「認知症の人と家族の会」大阪府支部代表、坂口義弘さん(77)も「要支援者の介護保険外しは明らか」と指摘す る。「自治体の中には財政難の町や村もあり、介護事業にお金が回せず、サービスが手薄になったり、全額負担になったりする可能性もあります」と怒りが収ま らない。

家族の会では64万人分の反対署名を提出したが、切実な声は届かなかった。
【矢野宏 新聞うずみ火】
~つづく~

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