国は沖縄県名護市辺野古への新基地建設に着手、埋め立て工事に向けた海底ボーリング調査を力尽くで進めている。9月7日に投開票された地元・名護市 議会選挙では、新基地建設に反対する候補者が過半数を占め、「ノー」の民意をあらためて突きつけたばかり。県民の大多数が反対する中での強行は何をもたら すのか。陸と海で繰り広げられる抗議行動の現場から3回に渡ってお届けする辺野古ルポの最終回。(栗原佳子/新聞うずみ火)

沖縄・キャンプシュワブ前で毎日行われている抗議行動。全面に立つのは民間警備会社の作業員(2014年8月 栗原佳子撮影)

沖縄・キャンプシュワブ前で毎日行われている抗議行動。全面に立つのは民間警備会社の作業員(2014年8月 栗原佳子撮影)

 

◇8割が「新基地建設工事中止を」

海での抗議行動だけでなく、陸での抗議行動も、資材などの搬入口になるキャンプシュワブのゲート前で7月上旬から行われている。「新基地建設阻止」「埋め立て反対」などのボードを手に、基地の中に向かい、一日に何度も何度も抗議のシュプレヒコールをあげる。

過剰警備は陸も同様だ。ゲート前には「殺人鉄板」と悪名高い山型の鉄板が敷き詰められていた。大根おろしを作る「おろし金」を想像してほしい。座り込むこ とは難しい。しかもこの上でもみ合って転びでもしたら大ケガしてもおかしくない。ましてや夏の炎天下。触ればやけどしそうだ。撤去を求める抗議の声に対 し、防衛局は「車の泥落とし」「路面保護」だと抗弁し続けている。

キャンプシュワブのゲート前に設けられた、おろし金のような「殺人鉄板」(2014年8月 栗原佳子撮影)

キャンプシュワブのゲート前に設けられた、おろし金のような「殺人鉄板」(2014年8月 栗原佳子撮影)

 

鉄板の前には青色の制服の男性たちがずらり。警官の夏服と見まごうが、よく見ると民間警備会社の警備員が動員されている。仕事内容を詳しく知らされないまま県外から来た若者たちが、抗議の住民と対峙する最前線に立たされている。

そもそも辺野古新基建設については、沖縄タイムス、琉球新報の世論調査でも7割以上が反対と答えている(その後、8月下旬に琉球新報が行った調査では「工事中止」を求める声が8割を超えた)。

ゲート横のテントにいても、それは肌で感じることができる。3日間、それぞれ2、3時間ずつ座り込みに参加したが、入れ代わり立ち代わり参加者が やってくるのに驚かされた。しかも「初めてこういう場所に来た」という個人が、声をかけただけでも何人もいた。行き交う車も、クラクションを鳴らしたり、 手を振ったりと、何らかのリアクションをする割合が高い。差し入れも多い。車で立ち寄り、匿名で菓子や飲み物などをそっと置いていく人、アスファルトに座 るのはしんどいだろうと、布製の折りたたみ椅子を20個以上車に積んできた人もいた。
猛暑に加え、スコールのような大雨にやられることも少なくない。そんな悪条件の中でも連日、テントには常時100人を下らない人たちがいた。夏休みということもあり県外からの参加者や家族連れも多い。

島田さん(左)の三線にあわせ声をあわせる山城博治さん(右)ら。キャンプシュワブ前で(2014年8月 栗原佳子撮影)

島田さん(左)の三線にあわせ声をあわせる山城博治さん(右)ら。キャンプシュワブ前で(2014年8月 栗原佳子撮影)

 

名護市に隣接する宜野座村の島田忠彦さん(60)は妻と娘、孫の3代6人でここへ何度も足を運んでいる。新基地ができれば自宅付近に滑走路の誘導灯ができ る。「海だけではなくて、沖縄にもう基地は作ってはいけない」と話す。終戦の日の15日、島田さんは三線を持って前に立ち、ひめゆり学徒隊の悲劇をテーマ にした沖縄民謡を切々と披露した。
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