◆シリアの人びとを救うためには何が有効なのでしょうか?

ヘンミ記者:シリアで今、私たちに必要なことはアメリカがトルコや周辺国に強い圧力をかけて、イスラム国への義 勇兵が自由に出入りするのを妨げるよう、国境警備を強化させるということです。アメリカはそうした役割を果たすことができます。でも実際にはそういう方向 には向かっていません。なぜかというと、シリアにはアサド政権という別のターゲットがあり、欧米諸国はそれを国益のもとに天秤にかけているからです。すく なくともシリア人の私にはそう見えます。

空爆でいくつかの軍事目標を攻撃するのはいいかもしれませんが、それよりもどうすれば実質的に人びとを助けることができるのかに注力しなければなら ないと思います。米軍の力でなく、また空爆でもなく、その地域に暮らす人びとのための政治システムをどう構築するかということを考えなければならないと思 います。

◆内戦終結のためにできることは何でしょうか?

ヘンミ記者:今、まったく、政治システムというものが存在しません。軍事的なことばかりに関心を寄せ、目を奪わ れていては問題の解決から遠ざかってしまうと思います。政治システムを真剣に考え、戦略的に立ち向かわなければならないと思います。アメリカは政治的解決 に力を発揮できると思います。シリア国外の反体制派と関係を持っていますが、それらは反体制派のすべてというのではなく、そのうちの一部の勢力だけです。

イスラム国はイラクとシリアのスンニ派地域で勢力を拡大している。写真はイラクのファルージャで撮影されたとする映像。(イスラム国が公開した映像から)

イスラム国はイラクとシリアのスンニ派地域で勢力を拡大している。写真はイラクのファルージャで撮影されたとする映像。(イスラム国が公開した映像から)

 

シリアには、きちんとした思考を持った人びとがたくさんいます。イスラム国を受けいれない人びと、同時にアサド政権を認めない人はたくさんいます し、政治的反体制勢力と自ら表明する人は(シリア体制派の多くが属する)アラウィ派のなかにもいます。今ただちに、こうした人びとと包括的な政治的反対勢 力をつくるべきです。さらにイスラム国を支援する国々に対しても圧力をかける必要があります。いろんな国が関係し、各勢力が敵対しているので、こうしたこ とは容易ではないでしょう。しかしこのまま放置すれば、事態はより悪い方向へと向かいます。

もちろん外国のせいばかりにしているのではなく、シリア人が責任を持ってこの事態と向き合わなければなりません。私たちシリア国民に必要なのは、政 治的なビジョンをもって内戦終結と復興のためにすべての宗教を認め合い、互いに文化を尊重し、合意をつくりだしていくことだと思います。しかし残念なが ら、シリアでは今、それらが存在しないのです。私自身、つらく、悲しい思いで自分の国を見つめてきました。そんななか、シリアの人びとに関心を寄せてくれ る人たちが世界に少しでもいてくれることが、私たちの心の支えでもあります。(了)

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