
荷台からの景色。アドベ造り(土と藁を混ぜたレンガ)の小さな村々を通り過ぎる(イラン・マハッラート近郊)
宿の前で待つこと数分、記念すべき"初乗り"は軽トラックだった。私と息子が助手席に、妻は嬉々として自分から荷台に。途中から別のおじさんも乗せて、土 漠地帯の一本道を走ること十数分、分かれ道で私たちとおじさんは下車した。おじさんは近くの村の自宅へ誘ってくれたが、我々は先を急ぐことにした。
「箱乗りなんて、小学生の七夕の時、地元の農家へ笹をもらいに行ったとき以来だよ!」
妻はいたく上機嫌だったが、次の車がなかなか来ない。ならば歩くしかない。変化のない風景に、ひょっこりと変化が現れる。小さな花、小さな運河、い つの時代のものか分からない石造りの小さな橋。道は容赦なく人里から離れていく。たとえ車が来たとしても、全部が停まってくれるわけではない。