思想信条の自由に関する特別報告者、アフメッド・シャヒード氏(撮影筆者)

◆欠陥だらけの入管法改定案

2021年2月19日、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改定法案が閣議決定された。これはこれまで国連などから受けてきた勧告に基づく改善はなく、現行の法律にさらに問題点が加わるものだ、と弁護士団体や人権NGOなどから批判が相次いだ。

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世界人権宣言に加え、日本が批准している自由権規約や拷問禁止条約は、拷問の禁止や恣意的拘禁の禁止を規定している。そこでは、収容はあくまでその人を拘束することが本当に必要なのかどうかを慎重に検討して、最短期間で最後の手段として使うものとされ、まず他に違う手段がないかを考えるべきだというのが大原則だ。

これらの国際人権基準に基づいて、日本の入管収用政策は1998年以降、複数の国連人権条約機関から繰り返し勧告受けてきた。つまり、現行の入管法も国際人権基準を満たしていない。そして次に見るように改定案はさらに問題が加わるというのだ。

◆特別報告者からの懸念

その改定案に対し、移民の人権、拷問禁止、思想信条の自由の3人の国連特別報告者と、恣意的拘禁作業部会が懸念を表明し、日本政府に建設的対話を求める書簡を3月31日付で送り、4月5日に公開された。(注1)

書簡では、これまで繰り返されてきた主要な問題点への懸念がまず示された。つまり、入管が外国人の強制送還の手続きを進めるために全員を収容するという「全権収用主義」、収容の上限を定めない「無期限収容」、そして司法のチェックがないこと(刑事手続きの場合、拘禁には裁判所の許可が必要であるが、入管収容に関しては、行政機関の判断のみで行われている)などだ。

これらは、国連人権機関から改善を求める勧告が再三なされてきた問題点だ。それに加えて今回の改定法案にいて、国連書簡は次のような点にも大きな懸念を示した。

3回目以上の難民申請者の強制送還を可能にするが、これは「迫害を受けるおそれがある国への追放や送還」を禁止するノン・ルフールマン原則の違反であること。また、新たに「管理措置」という制度が加わり、収容以外の方法が導入されてはいるが、これは単に主任審査官の裁量で認められた例外的な場合に限られていること。さらに、出入国管理において子供の収容の明確な禁止規定がないことである。

スイス・ジュネーブの国連欧州本部 前にある「壊れた椅子」。地雷やクラスター爆弾反対の象徴だ。2019年3月 藤田早苗

◆同じ抗議を繰り返す政府

この共同書簡に対し、上川陽子法相は「事前に説明の機会もなく、一方的に見解を公表されたことについては抗議をせざるを得ない」と反発した。しかし書簡の内容は、これまで複数の国連人権機関から何度も問題指摘を受けてきたものが繰り返されているのだ。突然このような見解が公表されたというなら、これまでの勧告をどうとらえてきたのか疑問だ。

また、国連からの懸念表明や勧告に対して、「一方的な声明だ」という政府の抗議は今回に限ったことではない。これまでも秘密保護法、メディアの独立性、共謀罪、福島原発の汚染水の海洋放出など、様々な人権問題について国連特別報告者から問題が指摘され、勧告が発表されるたびに日本政府は「一方的」「事実誤認に基づく」「不適切な内容だ」と同様の抗議をしている。