イドリブ北部のトルコ国境に近い町ハレム。建物が倒壊、崩落している。(2月6日・シリア・イドリブ北部ハレムにて撮影:アリ・ダラティ)

◆内戦で疲弊した地域、地震が追い打ち

反体制諸派が実効統治するイドリブでは、地元市民からなる民間防衛隊のスタッフが中心となり、がれきの中に閉じ込められた人たちの救出活動にあたってきた。これまでに救出されたのは2950人。

隊員のひとり、フィラス・アル・ハリファさん(33歳)の自宅は亀裂が入り、損傷した。フィラスさんは妻子を親族に預け、地震発生直後から救出活動に取り組んできた。

「これまで空爆で破壊された建物から人々を救出してきましたが、地震の被害ははるかに大きいです。各地で同時に建物が倒壊しているため、どこから救助を始めるのか、その判断にも苦しみました。父親にしがみついている子どもの2人の遺体を掘り出した時は、心がつぶれる思いでした」

2月6日の地震発生から1週間が経過しようとしているなか、救出活動は続いている。時間の経過とともに、新たな生存者が救出されることはなくなり、発見されるのは遺体だと、フィラスさんは話す。

2月6日に発生したトルコ・シリア地震は、広範な地域を襲った。トルコ南部のほか、シリア北西部でも甚大な被害が出た。(地図:アジアプレス)

イドリブと接する2つのトルコ国境ゲートが開き、国際支援組織の食料やテントなどの支援が始まった。しかし、まだ市民に物資が十分に行き渡っている状況にはないと、ムハンマド記者は伝えている。

建物が倒壊し、路上や畑など屋外で寝泊まりしていた市民も、現在はテントに身を寄せるが、夜は氷点下になるため、厳しい状況という。

「内戦ですべてが疲弊した地域では、災害に対応する力がありません。住民たちは苦しい状況に追い込まれています」
ムハンマド記者は言う。

※民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ):戦闘や災害で被害を受けた市民を救急救護するための民間組織。おもにシリアの反体制派エリアで活動。レスキュー活動のほか、医療支援などにも従事する。

 

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