◆異常値に「周辺工事が原因」と言い訳

石綿が漏えいしていた2地点の現場のうち1つは2023年9月7日に北海道内の解体現場で、煙突に使用されていたアモサイト(茶石綿)を含む断熱材を超高圧のウォータージェット工法で除去していたもの。

同省の委託を受けた分析機関の職員が、作業場内の石綿を除去して清浄な空気だけを外部に排出する「負圧除じん装置」の排気口付近を測定。すると水蒸気で数値が上昇する除去中だけでなく、作業後も粉じん濃度が上昇していた。除去作業そのものは2時間程度で終了し、その後1時間ほど除去した断熱材の搬出作業をしていた。

そのため分析機関の職員は石綿粉じんが漏えいした可能性があることを除去業者に説明した。ところが装置の排気ダクト内にたまった粉じんではないかと返答されたという。

負圧除じん装置の稼働直後なら排気ダクト内に粉じんが残っていて検出されることもある。しかし装置を稼働させるとすぐ排気されてしまうため、何時間も経った後では考えられない。結局、4時間測定の平均で同6.5本の茶石綿が外部に漏えいしていた。

同装置のフィルターにずれが生じているなど機器の管理が適切にされていないための不具合とみられる。専門家に聞くと、「いまだに装置にフィルターがちゃんと設置できていないとか論外ですよ」と憤慨していた。

もう1つは2023年10月17日に秋田県内の解体現場で、これも煙突の保温材を超高圧のウォータージェット工法で除去するものだ。石綿を含む繊維状粒子をほぼ即時に調べることのできる装置で負圧除じん装置排気口付近と除去現場と外部をつなぎ石綿を洗い落とすエアシャワーなどが設置された「セキュリティーゾーン」の更衣室(第1前室)で連続測定した。すると、作業員の出入りにともなって更衣室で数値が上昇した。

除去業者に伝えたところ、その後エアシャワーを十分浴びるよう徹底するとともに場内の負圧管理も改善された。

この現場では更衣室内で茶石綿が同10本漏えいしていた。更衣室のあるセキュリティーゾーンは外部の空気を除去現場内に引き込む構造で、実際に除去現場側に空気が流れていたという。もっとも同省に「大気環境中への漏えいはなかったものと推察される」と報告されているが、外部での測定結果など裏付けはない。そもそも石綿飛散があってはならない更衣室で漏えいが確認された以上、不適正工事は間違いない。

漏えいの原因について同省大気環境課に確認したところ、「周辺でべつの工事もやっていたのでそちらの影響ではないかとは回答があった」という。だが、周辺の工事で茶石綿を含む建材の除去作業があったかなどは不明。周辺作業が原因というのは不適正作業の際に除去業者が真っ先に挙げる言い訳の1つである。そもそも作業員の出入りで繊維状粒子の濃度が上がり、実際に石綿が検出されている以上、作業者に付着した石綿が飛散したと考えるのが妥当だろう。そうでないと主張するならきちんと測定データを示すべきだ。

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