◆恐怖と隣り合わせの日々、市民疲弊

連日のように鳴り響く防空警報。いつ落ちてくるかわからないミサイルや自爆ドローンへの不安が、人びとの心に重くのしかかる。恐怖と隣り合わせのなかで市民は疲弊している。警報やシェルターが「あたりまえ」になってしまった、戦火のウクライナの日常を写真で見る連続シリーズ。(オデーサ/玉本英子

消防を管轄する国家非常事態庁(DSNS)と国連児童基金(UNICEF)が作成した図。「壁2つ」とは、ミサイルや砲撃の爆発から身を守るため窓から少なくとも壁2つ隔てた奥まった場所に移動することを推奨するもの。(ウクライナ・DSNS画像)

 

ミサイル炸裂時、エレベーターが停止することもある。高層住宅では階段で階下に逃げ、破片やガラスの飛散を避けるため窓・鏡から離れるよう指示。窓から離れた通路側は生存の確率は上がるが、「安全」というわけではない。(ウクライナ・DSNS画像)

「いつロシア軍のミサイルに当たるか、これが本当のロシアン・ルーレットってやつさ」。ある住民は、ミサイル攻撃下に暮らす自分たちの状況をそう表現した。警報のたびに窓から遠ざかって奥の部屋に移動したり、地下シェルターに避難したりを強いられる人びと。あまりに頻繁に鳴る警報に慣れてしまって避難しない人も少なくない。ミサイルや爆撃は、直接の被害だけでなく、人びとの心を着実に疲弊させていく。

 

【動画】 2023年4月、中部ウマニのミサイル攻撃では子ども6人を含む住民23人が犠牲に。防空警報は発令されたが、未明だったためシェルターに避難する人はほとんどいなかったという。巡航ミサイルKh-101による攻撃とみられる。(2023年5月・撮影・アジアプレス)

 

昨年7月の集合住宅へのミサイル攻撃の現場。わずか数メートルで当たらなかったのにと思うと悲しくなる。炸裂したミサイルは部屋を吹き飛ばし、下までフロアごと崩落。10歳の少女と母親を含む6人が亡くなった。(2024年2月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)

 

防空レーダーが察知したミサイル攻撃の兆候があると、防空警報が発令される。対象地域には防空サイレンが鳴り響く。テレビも番組を中断するなどして警報を表示。病人や高齢者を助けあって退避を呼びかける画面も映し出される。(2024年4月・オデーサ:撮影・玉本英子)

 

番組中の防空速報。右の地図はウクライナの各州ごとの警報で、どの州も赤の場合は全土に防空警戒警報が出ているということを意味する。自爆ドローン「シャヘド」などは、防空警報が出ていない状況でも着弾することもある。(2024年4月・オデーサ:撮影・玉本英子)

 

2022年7月、南部セルヒーウカでロシア軍の長距離対艦ミサイルミサルKh-22が炸裂した集合住宅。子どもを含む22人が死亡。壁面と部屋が吹き飛んでいる。(2022年7月・セルヒーウカ:撮影・玉本英子)

 

セルヒーウカで被害を受けた住民、ローマンさん。爆発時、愛犬を写真左奥の浴室で洗っていて、直撃を免れた。「壁を隔てていなかったらきっと死んでいただろう」。窓側の壁面が吹き飛び、部屋は壁が崩れていた。(2022年7月・セルヒーウカ:撮影・玉本英子)

 

中部ウマニで昨年4月にロシア軍の巡航ミサイル攻撃を受けた集合住宅。左側にあったフロアはすべて吹き飛び、上からすべて崩落。エレベーターは歪み、むき出しになっていた。子ども6人を含む住民23人が犠牲に。(2023年5月・ウマニ:撮影・玉本英子)

 

現場検証のレスキュー隊員と6階に上がる。隊員の先には部屋があったが、壁面が吹き飛び、床ごと崩落。玄関に通じる手前の通路側から見たところ。(2023年5月・ウマニ:撮影・玉本英子)

 

6階の部屋があった場所。この部屋の夫婦2人が亡くなった。壁を隔てた通路や階段口は残っていたものの、ミサイル炸裂時、火災が発生。ミサイル攻撃の現場では、爆発や崩落のほか、火災と煙もまた危険だ。(2023年5月・ウマニ:撮影・坂本卓)

 

防空警報が発令されると、スマホの防空アプリが表示される。1日に何度も鳴り、「警報慣れ」で避難しない市民も少なくない。(2024年4月・オデーサ:撮影・玉本英子)

 

海沿いの高層住宅に住むリサさん。建物の海側はミサイルが着弾する確率が高く、警報が鳴ると窓から壁を隔てたトイレに移動。警報が続く時は、トイレにマットレスを持ち込んで寝ることも。「心も体も疲弊していく」と話す。(2024年3月・オデーサ:撮影・玉本英子)

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