イラン革命から26年。これまでの改革路線を踏まえ、イラン国民は何を想い、何を選択したのか。イラン在住の大村からのイラン大統領選挙ルポ。

7 《改革派、敗れる》

6月18日午前9時、開票結果を待つモーイン候補の選挙本部はどんよりと重苦しい空気に包まれていた。選挙運動員や新聞記者たちが集まっていたが、昨夜は誰も一睡もしていない。チャイとヌンとチーズだけの簡単な朝食をつまみながら、これまでの開票結果について疲れた表情で議論を交わしていた。

まだ半分ほどしか開票されていなかったが、結果は思いがけぬものだった。首位は予想通りラフサンジャニ前大統領だが、2位を争そうと思われていたモーイン候補とカリバフ候補が4位、5位と低迷し、これまでの世論調査でほとんど上位に登ったことのないキャルビ師とアフマディネジャード候補が接戦で首位のラフサンジャニ師を追い上げていた。

「なぜなのかわからない。アフマディネジャードは何かしたかもしれない。例えば偽造身分証を使って複数回投票させたり、もともと投票箱に彼の票を仕込んでおいたり、もちろん何の証拠もないよ。でも保守派候補のなかでさえ彼の人気は低かったんだ。やっぱりこの結果はおかしい」

モーイン支持の日刊紙「エクバル」の若い記者は憤る。

「国民は体制が変わることを望んでいたはずだ。この選挙の結果によって、特にアフマディネジャードが当選するようなことにでもなれば、誰もがおかしいと感じ、より一層の体制変換を望むだろう」

その日に乗ったタクシーの運転手もモーイン候補に投票していた。しかし、彼はモーイン候補の『独裁者は要らない』といった発言などは知らなかった。はたしてモーイン候補やその支持者の声はどこまで普通の人々の耳に届いていたのだろうか。
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