防衛省・自衛隊は特定の企業に対して、実は修理・整備などの契約を結ぶ前から派遣要員リストの提出を要請していた。
関係者から入手した石川島播磨重工業(現IHI)の内部文書によると、2001年10月29日のテロ対策特措法成立後、11月12日に防衛庁(現防衛省)海上幕僚監部装備部長から、インド洋に派遣される自衛隊艦船の故障に迅速に対応できるよう準備を依頼する文書が、防衛産業の各企業あてに出された。

同年11月15日、海上自衛隊の横須賀造修補給所艦船部長から、派遣準備の要請があった。その要請文書には、「米国において発生した同時多発テロに関連し、この度、我が海上自衛隊の艦艇も長駆インド洋まで進出し、国際貢献を果たす機会を与えられました」と書かれ、「修理態勢の確立、緊急時における連絡網整備(年末年始時も含む)、技師の派遣準備、パスポートの取得等」という要請項目が並んでいる。

そして11月29日、横須賀造修補給所で企業向けの「海外派遣に対する臨時修理態勢の確立の依頼」説明会が開かれ、約20社が参加した。海上自衛隊側から、「関係者名簿の提出、入港場所・日時等は秘密扱い、派遣時の工具・交換部品などの輸送は官側で支援」など具体的な指示がなされた。

企業側もこれに応じて、たとえば石川島播磨重工業の場合わかっているだけでも、航空宇宙事業本部の防衛システム事業部がヘリコプター着艦拘束装置と高性能20ミリ機関砲の修理態勢表(電話連絡網)、派遣要員19人の名簿とパスポート番号一覧を提出した。他の企業も同じような対応をしたと考えられる。

しかし、各企業は外部に情報が漏れぬよう、一部の関係者だけが事実を把握するようにしている。或る企業では、職場から数人の技術者が何日間か姿を消し、どこに行ったのかわからないまま戻ってきて、後日、インド洋に派遣中の自衛隊艦船の修理に行ってきたらしいとの噂が流れたという。だが、その件は社内ではタブー視され、外部の者に話せるような雰囲気ではないという。
国家と企業による秘密主義の壁の向こうで、何が進行しているのか。それは再び軍事優先の時代になってゆく前触れではないのだろうか。
(完)

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