◆初めての断食月 挑戦と挫折(下)
初めて臨んだ断食は、想像以上につらいものだった。

外出中は人目があるが、家にいるとつい誘惑に負けそうになる。そもそも誰の強制でもないし、禁煙のように、健康のためという目的があるわけでもない。神との約束を忠実に守れるか否か、そこに自らの信仰心が問われるのみである。

だが、イスラム教徒でない私にとっては、神との約束など、何の実感も伴わない言葉だ。ではなぜ私は断食に挑戦したのか。私はただ、このラマザーン月に起こる様々な出来事を、イラン人とともに共有したかったからだ。まずこの空腹感の共有なくして、何が共有できようか。

ところが、その決意がもろくも崩れ去る日が思いがけず早くやってきた。
ラマザーン月4日のことだった。その日は朝から電話が使えず、もともと接触の悪かったモジュラージャックのせいかと思い、電気屋を探して商店街を歩き廻っていた。陽が高々と昇った、最も暑い時刻だった。

ようやく見つけた電気屋は閉まっていた。ガラス窓から店内を覗くと、なんと店主が昼食をとっている。不心得なムスリムもいるものだと思いながら、他の店を探していると、車のなか、店の奥、あるいはすれ違いざま、いたるところで口をもぐもぐとさせて、明らかに何かを食べている人たちの姿を目にした。

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