調査能力のない名古屋市

それはなぜか。

工事の発注者である名古屋市交通局が、事故直後に元請けのライフテック・エム(同市)や下請けで入ったアスベスト除去業者、アンサー(三重県桑名 市)から事情を聞いたところ、「『工事は完璧だった』『自分の責任ではない』などと主張した」(松井誠司・市交通局営繕課課長)というのだ。

そのため、機械室の吹き付け材に使用されていたのと同じクロシドライト(青石綿)が機械室の外で検出されたことや、機械室とダクトでつながる地上で検出されていたことから現場からの漏えいと判断した名古屋市側と意見が対立した。

しかも事故直後、名古屋市環境局の指導で漏えい原因となった機械室の入口の扉を養生用のテープで目張りしてしまった。この措置は駅利用者が通る改札 側への漏えいを防ぐためには仕方なかったとはいえ、結果的に、機械室入口に改めて別の隔離養生をしなくては現地に入って調査することもできない状況となっ てしまった。

市環境局大気環境対策課課長の小松隆雄氏は「現場から(アスベストが)出たのは今回が初めてではない。以前だと(現場を密閉して外部から隔離する) 養生の破れや(アスベストを除去して外部に漏らさないようにする)負圧除じん機からの漏れがあったが、今回もそうだと断定まではできない。きちんと原因究 明する必要がある」と話す。

だが、市交通局側にはそうした原因を調べることのできる技術者がおらず、仮に中に入ることができても原因の特定まではできないという。

市環境局の小松氏も「専門家はなかなかいない。規制担当は"化学屋"が多い。測定はちゃんとやるんですけど、あとは(工事開始前の)養生の点検とかが中心でして......」と言葉を濁す。

市交通局の松井氏によれば、その後も何度か事業者から聞き取りをしたが、「責任については平行線のまま」という。
~つづく~
【井部正之】
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※初出「名古屋市地下鉄アスベスト飛散事故で続く混乱 原因究明めぐり異常な工事委託が浮上」『ダイヤモンド・オンライン』2014年2月13日掲載に加筆修正

 

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