「施工業者が手抜きをするのは当たり前。行政側の指導ミスや見落としなんてしょっちゅう。漏洩事故の防止には、第三者の立場の監視要員を育成し、毎 日のように現場に張り付かせて監視しないと駄目です。必要なのは監視の強化であって、リアルタイムモニターの法的位置付けではない」

NPO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」事務局長の永倉冬史氏も、「監視の強化とその両輪となる罰則の強化・適用、レベル3建材の対策強化や 届け出義務化、除去工事後の安全確認の強化など、以前から指摘している改善事項は山積みのはず。その対応をまずきちんとすべきです」と批判する。

どれだけアスベストを飛散させようが、形だけ行政指導に従えば罪に問われない現状で、形式的な測定義務や測定機の導入を法的に位置付けたところでほとんど効果は期待できない。性能の検証が十分されていないのではなおさらだ。

法改正では、厚労省と同様に監視方法の一つとの位置付けのようだが、性能的な検証もなく「繊維状粉じんの測定機」として国が中途半端なお墨付きを与えれば、訴訟リスクを抱え込むことになろう。

過去に指摘されている問題に知らぬ顔を決め込み、形だけの対応を続けようとする国側の動きにはあきれるほかない。何のための法改正なのか原点に立ち戻るべきだ。(了)
【井部正之】

※初出「アスベスト対策で進められる 測定機導入に潜む"怪しい"思惑」『週刊ダイヤモンド』2012年6月16日号

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