◆札幌市は即日公表
同じタイミングでよく似た検証がされていた札幌市はどうか。
同市では昨年10月、給食室の煙突内に断熱材のアスベストが落下し、給食用ボイラーが使用できなくなった。真冬に小中学校30校で給食を提供できなくなり、新聞・テレビで散々報じられた。その結果、札幌市では、名古屋市では実施されなかった、行政対応が適正だったかどうかの調査・検証が行われた。

その検証報告書は2月20日、秋元克広・札幌市長に提出され、即日公表された。市のホームページ上では「2月22日更新」と記載されており、遅くとも2日後には掲載されたことになる。さらにいえば、3カ月が経過した現在も報告書は札幌市HPのトップページにリンクが張られている。

これが普通の対応だろう。

ちなみに、名古屋市の検討会では、非公開会合による検討もあり、検討経過すべてが公表されているわけではない。特に重要ポイントが非公開会合で決められており、現在の結論に至る過程がそもそも十分に明かされていない。だからこそ、報告書が重要なのだが、相変わらず市側の認識はずれている。

前出・成田事務局長はこう懸念する。
「(昨年12月の)最後の検討会では、今回の結果をきちんと共有して、二度と起こしてはいけないと委員の1人が指摘した。それとは逆に結果を住民に知らせないようするかのような対応だ。市はこのアスベスト飛散事故のことをうやむやにしたいのではないか。六番町駅の機械室の吹き付けアスベストはいまも除去されずにそのまま残されている。そこを今後どうするかも明らかにされていません。このままだと、こっそり住民に知らせないで除去するようなことすらやりかねない」

5月24日現在、名古屋市交通局HPには報告書は公表されていない。市は最後まで「市民ファースト」との認識には至らなかった。そう結論づけざるを得ない。そんな認識では成田事務局長の指摘通りの事態すら起こりかねない。そして、再びアスベストを飛散させ、市民に曝露させるのだろうか。【井部正之】

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