◆密酒取り締まりの影響で酒価格上昇、住民の不満が高まる

当局の厳しい取り締まりにより、密造酒1本が1800ウォンから現在3000ウォンまで値上がりしたと、協力者は伝えてきている。一方国営工場で生産された酒は、安いものが1本3500ウォン、高級品は2万ウォンで売られている。12月9日時点のトウモロコシ1キロの価格は1900ウォンだ。生活苦にあえぐ一般庶民の立場ではいかにも高く、住民の間で不満が高まっているという。

「国が販売している酒は高くて手が出さないし、酒の密造は取り締まりが厳しいからだろう、11月初めに近くの国営商店に泥棒が入ったのだが、陳列棚にあった酒を全部盗んでいったそうだ」

※北朝鮮ウォン1000ウォンは日本円で約17.5円。

◆取締り強化でもなくならない密造

取り締まりが強化されるにつれ、当局と住民の間の駆け引きが激しくなっているようだ。「酒飲み」たちの密造酒への需要が高まるにつれてその価格は高騰した。金儲けのチャンスを窺う人たちは、山や畑の中など人里離れたところで酒を作り、知人ルートで密かに売っているのだという。

一方で当局は狡猾な取り締まり方法を導入している。酒を密造している家を、貧しい住民に密告させるため、トウモロコシ5キロを褒章として出すことにしたのだ。協力者はこのように説明する。

「褒賞は国が与えるのではない。密造している家を取り締まって押収したトウモロコシを通報者に渡すのだ。それを目当てにした生活が苦しい人たちが、麹の匂いを嗅ぎながら辻々を歩き回っている」

酒の生産と流通、販売を掌握しようと躍起の当局と、より安く酒を飲もうとする「呑み助」、そして商売人の間で繰り広げられている綱引きは、今後も長く続くことになりそうだ。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

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