◆「秘書のせい」ではなく世耕議員の「単独犯行」では?

刑事告発した上脇教授は次のように話す。

「世耕議員は、秘書がキックバクを受けた寄附金収入を簿外で管理していたと弁明していますが、秘書が議員の指示なしに簿外で管理するはずがありません。秘書が会計責任者であれば会計帳簿に記載していたはずですから、支出について『不明』と収支報告書を訂正するはずがありません。

むしろ、『不明』としたのは収支報告書に記載しない裏金と認識していた世耕議員が独りで管理していたからでしょう。私は、世耕議員がキックバックの寄附金収入を会計責任者に知らせていなかったから会計責任者は収支報告書に記載していなかった、世耕議員の『単独犯 』だとみて刑事告発しました。ただ、世耕議員主導で、秘書との共犯の可能性もあるので、共犯として秘書も告発もしておきました。」

◆選挙区の有権者に高級洋菓子…公選法違反の疑い

世耕議員の有力な支援者の一人であり、和歌山木材港株式会社の代表取締役を務める宮本次朗氏は自身のブログで、昨年11月下旬に、都内のレストランで世耕議員と二人で食事をした際に「村上開新堂」のクッキー缶をもらったことを書いている。

この問題を最初に報道した「しんぶん赤旗日曜版」によると、宮本氏はクッキー缶をもらったのは事実で、和歌山市内在住だということを認めている。この「村上開新堂」のクッキーは、「お客様登録」されていないと購入できず、何か月も前から予約してようやく手に入るものだという。

つまり、和歌山県を選挙区に持つ世耕議員は、和歌山県内の有権者に入手が非常に困難な品を贈ったということであり、これが公職選挙法違反に当たるとして今回、刑事告発されたわけだ。

上脇教授はキックバックを受け取っていた他の安倍派議員よりも先に世耕議員を刑事告発した理由を次のように話した。

「高級洋菓子のクッキー缶の値段は8000円で、それを受け取った宮本氏も、贈った世耕議員も認めています。宮本氏は世耕議員の選挙区在住の住民ですから、明らかに公選法違反の寄附に該当します。これは秘書の責任にはできません。公訴時効が3年なので最優先して告発しました」

◆収支報告書に「不明」多数など政治家として論外

その上で、上脇教授は更なる余罪の可能性にも言及した。

「『紀成会』の訂正された21年分と22年分の収支報告書には、『村上開新堂』への支出が新たに書き加えられました。世耕議員側はそこで購入したクッキー缶を宮本氏に贈答したことを否定していますが、世耕議員が独りで管理していた裏金で購入していたのでしょう。となると、宮本氏以外の選挙民にも贈答として公選法違反の寄附がなされていた可能性もあるので、その点についても東京地検には捜査してほしいと告発状に書いておきました」

安倍派から世耕議員側にキックバックされた1542万円の使途が一部明らかになった。そして、それが裏金として、有権者への贈答品購入資金とし使われた可能性があるのだ。今回、贈答先が明らかになったのは1件だけだが、それ以外にも選挙区内の有権者に配られていた事実があるのではないかという疑惑が生じた。

そもそも収支報告書に「不明」が多数あるというのは、「政治とカネ」の透明性という見地からすれば、論外の所業というしかない。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

 

 

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