テインセイン大統領は9月末、政府と中国国営企業が北部カチン州で共同建設を進めていたミッソンダムの工事を凍結すると発表した。だが現地の環境団体『Kachin Development Networking Group(KDNG)』が10月11日に建設現場を訪れた際にも、工事が続けられていた。写真は当日撮影したもの。

 

◇現地調査中の環境団体が報告...中国側作業指示の可能性も

ビルマ(ミャンマー)のテインセイン大統領は9月末、同国北部カチン州を流れるイラワディ(エーヤワディ)川で進められていたミッソンダムの建設を凍結すると発表した。しかし建設現場周辺で調査した環境保護団体によれば、現在も発表前と変わらず建設関連作業が続いている。
ミッソンダムはビルマ政府と中国国営の中国電力投資公司(CPI)などが共同で建設を進めていた大型ダム。貯水池により広大な土地が水没する予定で、周辺住民1万人以上が移転の対象となっていた。またイラワディ川というビルマにとって経済・文化的に重要な川をせき止める一方で、生産される電力の大部分はビルマ国内用ではなく中国に輸出される予定であることから、ここ数か月、ビルマ国内でも建設に反対する動きが大きくなっていた。
テインセイン大統領が9月30日、「任期中(2015年末まで)はミッソンダムの建設を中断する」と発表したため、反対運動は一旦収まった。
しかしビルマ国内のダム建設を監視するNGO、『ビルマ河川ネットワーク』は、
「建設現場は現在、CPIが管理しており、建設が本当に中断されるかはCPIの行動にかかっている」
と指摘する。
事実、建設現場周辺で調査活動を行う環境団体、『カチン開発ネットワーキング・グループ(KDNG)』が10月14日に公表した報告書によれば、大統領の発表後も建設現場には作業員や機材が残り、測量やダム建設に必要な道路の敷設工事が続いている。

同日に撮影されたダムの建設現場。作業員の姿が見える。

 

また、ダム建設にかかわる関連会社の作業員が「建設を続けるのでトラックや機材を撤収しないようにCPIに指示された」と語ったという。
報告書には、9月29日から10月11日にかけて撮影された、現場に並ぶ機材や測量を行う作業員の写真も掲載されている。
【寄稿:秋元由紀/ビルマ情報ネットワーク】

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