◆北朝鮮版「援助交際」まで

実態を調べるため、協力者は聞き取り調査を始めた。以下はその報告である。

「顔見知りに、生活が苦しくて売春でお金を稼いでいる女の子がいるので話を聞きました。ジョンミンというその子は17歳で高級中学校の生徒です。彼女によれば、自分の周りにもお金を稼ぐだめに日常的に体を売っている子が何人かいるそうです。中には特定の金持ちから援助を受けている子もいました。」

北朝鮮版の「援助交際」である。

「お金はどれくらいもらっているのか聞くと、普通は中国の金で50~150元、うまくいくと200元もらえることもあるとのことでした。若い子たちだと金持ちや幹部たちはたくさん払うんでしょう」
※10元は約177円

北朝鮮にはラブホテルがあるわけではない。取締りの目も厳しい。場所や秘密保持はどうしているのだろう? 協力者は次のように説明する。

「取締りの目があるので、男たちは女の子を家に連れて帰る場合が多いそうです。女子高生たちはまだ世間知らずなので、お金をくれるからひょこひょこ付いて行くのでしょう。体を専門的に売る女性たちは、取り締まりに備えて守ってくれるバックを付けるけれど、女の子たちは友人を1人外で見張りに立たせるくらいなんだそうです。売春は『非社会主義』行為だとして厳しい取り締まり対象なので、最近は、女の子たちが互いに自分の客を紹介し合うのだということです」

◆売春増加の理由は生活悪化だけではない

女子生徒までが売春に走るのは、それだけコロナ事態下で庶民の窮乏が深刻だからだろう。協力者はそれを認めつつも、若い世代の意識変化に注目する

「もちろん、誰もが暮しに困っているから、それが売春が増えている一番の原因です。親が未成年の娘に、「外でお前も稼いで来い」と売春を強いるケースもあるんです。でも、やはり意識の変化は大きいと思う。女子高生の中には、体を売って大人を凌ぐほど稼いでいる子もいる。いろいろ買いたい物が多い年頃だからでしょうが、セックスや倫理に対する観念は驚くほど変わったと思います」

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

★新着記事