◆石綿含有だが「基準内」と新主張

同社は今回初めて石綿含有を認める一方、基準超は「確認されませんでした」と新たに主張した。

発表によれば、同社は「マインマグ製品の石綿含有率を正確に分析するにあたって、専門機関による指導を仰ぎ、多方面から検証を繰り返し行いました」としている。その結果、マインマグに基準超の石綿が含有されているとの「事実は確認されない」との結論にいたったというのだ。

同社はすでに厚生労働省など関連省庁に「報告」したとも明らかにしている。 興味深い記載として、同社の「検証」では、建材などの石綿分析で使う「既存の検査方法ではその石綿の含有を正確に測定することができない」と主張。そのために分析結果が得られるまでに時間がかかったと釈明している。

ふつうの分析方法では適切に分析できないとの主張は具体的にどういうことなのか。しかし発表にはそれ以上の記載や裏付けは示されておらず、同社は「検証」したという報告書も公表していない。

発表当日、筆者は技術のわかる担当者も交えて話を聞きたいと同社に取材を申し込んだ。しかし同社は拒否。電子メールで質問を送るよう求められたのでその日のうちに、検証結果報告書の提供・公表をはじめ、検証の詳細や科学的根拠、今後の販売再開など計9項目を送った(その後1項目追加し計10項目)。ところが10日経っても返答がなかったので改めて連絡したところ、「対応を控えさせていただく」(リスク対策部法務室)と回答を拒否した。

通常、製品に重大な問題があり、自主回収までするような事態になった場合、検証結果を公表するのが当たり前だ。たとえば2018年3月、津田駒工業(石川県金沢市)は基準超の石綿を含有する部品を織機に使用していたことを発表。弁護士や社外取締役による特別調査委員会を設置し、5月に報告書を公表した。また石綿関連ではないが、認証不正問題が起きたダイハツ工業は第三者委員会による調査を実施し、その結果を公表している。これがふつうの対応だろう。

ところがノザワの場合、「専門機関による指導」のもとで、「多方面からの検証を繰り返し行いました」とあるだけで、具体的な体制や手法、内容には一切触れてない。検証過程が明かされないまま、「基準である0.1%を超える石綿が含有されているとの事実は確認されない、との結論」が一方的に提示されただけだ。同社の主張の根拠を示すはずの報告書は公表されず、取材も拒否。1年近くかかったという「検証」は完全に“ブラックボックス”だ。これでは信用などできようがない。

同社はマインマグの自主回収は「在庫数のほぼ全数を回収」済み(実数は非公表)としつつも、「混乱を回避」するために継続すると発表。販売再開については「現時点で決定した事実はありません」としたが、「公表すべき事項を決定した場合には、改めてお知らせいたします」との書き振りからはいつでも製造・販売を再開できるとの自信すら垣間見える。

だが、同社が今回発表した裏付けのない「主張」において少なくとも石綿含有を認めた以上、製品の有害性は明らかだ。あるいは製造・販売禁止などの規制には引っかからない基準内だから、石綿を含有していても販売するのに問題ないとでもいうのだろうか。同社はきちんと説明すべきだ。

 

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