◆命の駆け引き

遠隔操作のゴーグルをつけさせてもらった。機体前方のカメラがとらえた映像がそのまま映る。画面の周囲に高度やバッテリー残量を示す数字が表示されている。まるでテレビゲームだ。 「車両や兵士めがけて突っ込んでいく。最初はゲームの感覚がした。ゴーグル越しに彼らがパニックになり、隠れたり逃げ回ったりする姿を楽しむ自分がいた。でも、これは“命の駆け引き”だと認識した。任務中に位置が把握され、戦車の砲撃を食らったことがある。敵にとって、こちらは最優先の攻撃目標で、真っ先に狙われる」

遠隔操作用コントローラー。ラジコンのプロポやゲームのコントローラーのような印象だ。これで機体を巧みに操り、標的を狙う。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

◆「車内にとどまるな。茂みに逃げ込め」

ドローンでロシア兵を狙う映像には、必死に逃げ惑う姿が映る。映像が途切れた瞬間が、爆発したことを意味する。「最期の瞬間」の兵士たちの悲痛な顔。動画は毎日、SNSで流れ、ロシア軍もまた、ウクライナ兵を仕留める「戦果」を誇示する。いまでは、どの部隊もドローンを撃ち落とす散弾銃を携行している。

「兵士がいなければドローンは飛ぶこともできない。だが兵士が足りない」と話すバンデラ操縦士。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
ウクライナ軍との戦闘でクルスクに派兵された朝鮮人民軍の兵士もドローンに苦戦していたようだ。近づいてくる自爆ドローンに向けて銃を撃つ様子が映っている。(2024年12月・ウクライナ特殊作戦軍・独立西部特殊作戦センター映像)
クルスク戦でウクライナ特殊作戦軍が公表したメモは、戦死した朝鮮人民軍のチョン・ギョンホンの所持品とみられるもので、ドローン対策について記されている。(2024年12月・ウクライナ特殊作戦軍公表写真)
クルスク戦で朝鮮人民軍もまたドローンの運用を学んでいる。写真は北朝鮮兵が小型自爆ドローンを運用しているとみられる映像。(2025年8月・朝鮮中央テレビ記録番組映像)

もしドローンに狙われたらどうすればいいのか。バンデラ操縦士に聞いてみた。 「車両と兵士だと、我々はまず車両を狙う。距離があるときは散弾銃で撃ち落とすか、車で高速で走り抜けたらなんとかなるかもしれない。それが間に合わないなら、車をあきらめて飛び降りろ。そして脇道の茂みに逃げ込め。プロペラが茂みの枝に引っかかるから、深追いは躊躇する。あとは神に祈れ」

ドローンが飛来する前線地帯では、道路全体を防護ネットで覆うようになった。サッカーゴールのようなネットが何キロも張り巡らされている。ネットはシトカと呼ばれる。建物などの防護には、ヨーロッパ各地から送られた中古の漁網なども使われている。(2026年3月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
防護ネットがあってもドローンを完全に防げるわけではない。側道の隙間などから侵入した自爆ドローンが待ち伏せ攻撃をすることもある。写真はロシア軍ドローンが防護ネット内に入り込み、ウクライナ軍のM113装甲兵員輸送車を攻撃する映像。(2025年9月・ロシア軍映像)

「じゃあ、あなたを敵と思って狙ってみよう」と、彼は言って、ゴーグルを装着し、コントローラーを握った。 プロペラが高速で回転し始めると、ブィーンと甲高い音とともに周囲に土ぼこりが舞い上がった。すっと浮いた機体は一気に上昇し、大きな8の字を描くように飛び回る。私は逃げようとするが、機体は高度を変えながら、行ったり来たりを繰り返す。前後左右に動き回り、いきなり急降下してきて、地面すれすれに突っ込んできた。逃げ切れるものではない。 そうやって命を絶たれていった双方の兵士たちのことを思うと、やるせない気持ちになった。

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