プータオ以北の人びとは、狩猟で生計を立てている人が多い。日が暮れる前、薪を背負って家路を急ぐラワンの男性。

プータオ以北の人びとは、狩猟で生計を立てている人が多い。日が暮れる前、薪を背負って家路を急ぐラワンの男性。

彼はいったい何をしているのか。
彼の話によると、プータオ以北の地域で有名な僧侶が、タフンダン村に向かうことになった。そのため、僧侶の道中に間違いがあってはならないと、斥候として動いているという。彼は職務に忠実で責任感を体現している青年将校に見える。僧侶が1人で山の中を動くということは、実は、危ないことなのか。北ビルマは宗教的に不安定、と言うことなのか。ちょっと気にかかった。

青年将校に会った翌日、シンシャの北のパナンディン村に到着する。なんと、そこで、その有名な、ティロカという名の僧侶に遭遇した。なんでも、タフンダン村に建つパゴダの手入れに向かっているという。

それにしても、銃を持った村の警官を3名と周辺の村人十数名を連れての移動は、やはり、不思議な感じがする。これだけの人数を連れての道中は、平和な山の中という情況にはまったくそぐわない。考えてみると、そうやって、定期的に僧侶が訪れることによって、あのパゴダは手を入れられているのだ。
ウー・ティロカ僧侶は、尾崎さんの本にラマ僧としても登場していた。

パナンディン村にかかる吊り橋。

パナンディン村にかかる吊り橋。

ウー・ティロカ僧侶は言う。
「私は自分の正しいことを信じてやっている、ちょっと型破りの僧なんだ」
そりゃそうだろう。贈り物としてもらったビスケットを、正午を過ぎても堂々と食べている(ビルマでは通常、僧侶は正午時を過ぎると飲み物しか口にしない)。それに、私たちとまったく同じ形の、中国製の布の軍靴を履いている。

「これだけの人数を伴って移動するのはね、実は、タフンダン村では僧侶として生活できないからなんだ」
ビルマ僧侶の衣食住は、周囲のビルマ人が功徳の形で、寄進をすることによって成り立っている。だが、ティロカ僧侶が、異なる宗教のチベット村で修行しても、誰一人として彼の生活を支えてくれることはない。ティロカ僧侶は90年代初めタフンダン村で修行を始めた。

だが、結局うまくいかず、ガリガリに痩せ細って、タフンダン村で僧侶としての生活をあきらめた。そりゃそうだろう。同じ仏教であっても、ビルマとチベットは、違うんだから。
つづく
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