◆支援もない 忘れ去られた独自避難者
内戦が続くシリアでは、650万を超える国内避難民がいるといわれる。多くが避難先の町で部屋を借りるか、キャンプに身を寄せている。一方で、攻撃を避けるために町から離れた農地の仮設テントで生活する家族も少なくない。こうした独自避難者には支援もなく、忘れられた存在となっている。トルコ軍が後押しする自由シリア軍系反体制勢力(シリア国民軍など)が展開する北西部アル・バーブ郊外の果物畑で暮らす56歳の女性の声を聞いた。取材は現地協力者を通しておこなった。(聞き手・構成:玉本英子/アジアプレス、取材協力:ムハンマド・アル・アスマール)
◆戦火に追われ、各地を転々と
ウンム ・ムハンマドさん(56) :
アル・バーブ郊外のザクロ農園の片隅にテントをたて、子どもと孫あわせて22人が4つのテントで暮らしています。なぜ農園かというと、民家から離れているので、砲撃されにくいだろうと考えたこと、そして、園主が作物に水をやる作業人を捜していたというのもあります。
私と家族は、もともとは大都市アレッポ出身です。アレッポではシリア政府軍(アサド政権)と反体制派との激しい戦闘が始まりました。内戦で大混乱になり、2014年に、私たち家族は(シリア中西部にある)ハマ郊外の田園地帯に避難しました。しかし政府軍はハマも攻撃しました。2017年、車もないなか、アレッポ西部のアタリブという小さな町へと移動します。ところが、そこでも空爆が始まります。昨年末に、この農園にたどりつきました。
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