パナンディン村に泊まった翌朝、日が昇る前、川に据えられた簡易発電機によって電球がが灯っていた。

パナンディン村に泊まった翌朝、日が昇る前、川に据えられた簡易発電機によって電球がが灯っていた。

 

あれは確か、ノアー宿泊所での泊まりだった。終日、雨の中を歩き続け、全身がずぶ濡れになり泥にまみれていた。囲炉裏端で汗を乾かすと、さすがに自分の体がにおってくるのが分かる。ところがノアーの宿泊所周辺には水浴びをする適当な小川や沢がない。

さて、どうしようと、着替えのシャツと下着と石けんを手にして山の奥に入った。5分ほど歩くと、岩陰にチョロチョロと水が流れている源頭に出くわした。水量は少ないが、両手で掬えるだけの水はある。冷えた岩陰のわき水でタオルを濡らし、蚊やブヨに刺されないように素早く全身を拭いていた。

何とか身体を清め、さっぱりとして立ち上がる。その時だった、藪の奥から音も立てずいくつかの人影が、私のまなかい をよぎって消え去った。
あっ、何だ、彼らは。そう思った後には、干上がった小川に架かる丸木橋だけがそこに残っていた。

男女を含めて六、七人くらいだった。そのうち若い女性が2人ぐらいいただろうか。1人はギターを抱えていた。スピーカーや音楽用のアンプらしき物を担いでいる男性もいた。ああ、あれが噂に聞く、ラワン人によるキリスト教の移動宣教隊だったのか。布教のため、ああやって、山奥の村々を静かに訪ね歩いているんだな。
つづく
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