内戦が泥沼化する以前、シリアでは夜になると、人びとは親戚や友人宅を訪ねるのが習慣で、子どもたちは夜中まで路上で遊んでいた。しかし今では、夕暮れとともに自宅へ戻る。懐中電灯の明かりで早めの夕食をとり、その後すぐに寝床につく。(シリア北東部ハサカ県デレク市、3月下旬撮影:玉本英子)

 

シリア北東部ハサカ県では戦闘で送電線が破壊されるなどで、電気供給は1日1時間だけになってしまった。
夜8時、私が滞在した家庭では、懐中電灯の明かりで晩ごはんを食べていた。ナン、チーズ、ヨーグルト、ゆで卵、タヒーナ(白ゴマのペースト)、せいいっぱいのご馳走が並ぶ。

食後の甘い紅茶をすすりながら、家族と話をした。みな口をそろえて「もう限界」と言う。
主婦のカミラさん(48)は「洗濯機も掃除機も冷蔵庫も使えない。発電機を買うお金も燃料もない。私たちにできることは我慢することだけ」と嘆く。

テレビも携帯も、インターネットも使えなくなった。家族は電池を入れた古ぼけたラジオから流れる、シリア情勢のニュースにじっと耳を傾けていた。
【シリア北東部ハサカ県デレク(アラブ名アル・マリキーヤ)  玉本英子】

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