シリア北西部にある刑務所。かつては秘密警察の拷問があいついだ。いま、ここには地元勢力と敵対するイスラム組織のメンバーが収監されている。「組織とは関係ないのに嫌疑をかけられ、投獄された」と訴える収容者もいた。(アレッポ県アイン・アル・アラブ 1月撮影:玉本英子)
シリア北西部にある刑務所。かつては秘密警察の拷問があいついだ。いま、ここには地元勢力と敵対するイスラム組織のメンバーが収監されている。「組織とは関係ないのに嫌疑をかけられ、投獄された」と訴える収容者もいた。(アレッポ県アイン・アル・アラブ 1月撮影:玉本英子)

 

◆「イスラム組織」と疑われ長期収容も

シリア北西部、アイン・アル・アラブの町なかにあるアサド政権時代からの刑務所。高い塀の上には、有刺鉄線が張り巡らされている。土色の建物の薄暗 い通路を抜けていくと、3メートル四方のコンクリートで囲まれた部屋があった。黒い鉄格子の向こうに、男たち数人が座り込んでいた。

刑務所には53人が収監され、うち16人は地元のクルド組織と敵対するイスラム武装組織の嫌疑で投獄されていた。いずれも普通の大学生にしか見えず、濃いひげをたくわえたイスラム兵のイメージとは程遠い。

「自分は無実だ」と青年たちは口々に言う。20代のサリーと名乗る男は、町の東隣にあるラッカ県のテルアビヤットで拘束された。「トルコへ逃げようとしていただけなのに、捕まってしまった」と訴える。

地元クルド人勢力と敵対する「イスラム兵」として刑務所に入れられた青年たち。「自分たちは無実だ」と訴えるが、刑務官は「彼らがイスラム兵なのは確か」と言う。(アレッポ県アイン・アル・アラブ 1月撮影:玉本英子)
地元クルド人勢力と敵対する「イスラム兵」として刑務所に入れられた青年たち。「自分たちは無実だ」と訴えるが、刑務官は「彼らがイスラム兵なのは確か」と言う。(アレッポ県アイン・アル・アラブ 1月撮影:玉本英子)

 

しかし刑務官は「彼がイスラム兵なのは明らか。手榴弾を所持して不穏な行動をしようとしていた。捕虜交換の時までここに入れておく」と冷めた口調で言った。

人びとはアサド政権のもとで、長期投獄や拷問に苦しみ、その独裁からの解放を求めて闘いを始めたはずだった。しかし、政府派がいなくなった地域で は、令状なしの逮捕や裁判なしの投獄が相次いでいる。ほかの刑務所では、拷問や銃殺もおこなわれているという。人びとの自由への思いとは裏腹に、内戦下の シリアで、また別の悲しみが広がっている。

【シリア北西部・アレッポ県 アイン・アル・アラブ 玉本英子】

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