車の中を丹念にチェックする人民防衛隊の女性民兵。昨年11月にアイン・アル・アラブ市内で大規模な自動車爆弾攻撃が起き、多数の市民が死傷した。その後、治安警備が一層強化された。(シリア北西部・アレッポ県:1月撮影・玉本英子)

車の中を丹念にチェックする人民防衛隊の女性民兵。昨年11月にアイン・アル・アラブ市内で大規模な自動車爆弾攻撃が起き、多数の市民が死傷した。その後、治安警備が一層強化された。(シリア北西部・アレッポ県:1月撮影・玉本英子)

 

多くの車は厳しい取り締まりを事前に知っているようで、たいした荷物も積んでいない。ジャラブロスから来た男性、アブドッララハマンさん(35)は、
「向こうでは毎日、どこかで銃撃戦が起き、人が殺されている」
と声を震わせる。他の人たちに聞いても、これまでにないひどい状況だ、と口々に言う。

現在、町には「神は偉大なり」と染め抜かれたISISの黒い旗があちこちに掲げられ、「まるでイスラム自治区になってしまった」と言う人もいた。その町を奪おうと、自由シリア軍が攻撃を仕掛ける。

女性民兵のマハ・イブラヒムさん(31)も、ジャラブロスの出身だった。彼女は半年前、人民防衛隊に志願した。「イスラム過激派から住民を守るため」に銃を持つことを決めたという。

マハさんの家族は今もジャラブロスに残る。ISISは地区の住民たちに、独自に公布した「イスラム法」をしいた。「違反者」には容赦ない処罰が課されるという。

女性はベールで顔まで隠さなければならず、一人で外に出ることもできない。母親は電話で「街角にはイスラム兵士たちがたむろし、住民たちを監視しているので、逃げることもできず、みんな従うしかない」と伝えたという。

シリア北部の多くの町では政府軍と反政府組織に加え、反政府派組織間の勢力争いが激しさを増している。住民は各派の勢力争いの戦闘のはざまで、逃げ 場さえ失い、わずかな食料で命をつないでいくしかない。内戦が複雑化の一途をたどるなか、和平への道のりはまだ見えてこない。

【シリア北西部・アレッポ県 アイン・アル・アラブ 玉本英子】

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