「戦闘で物が届かない。店の商品もこんなに寂しくなってしまったよ」
八百屋の店主は嘆いた。(シリア北東部ハサカ県デレク市3月下旬撮影:玉本英子)

 

シリア北東部の町、デレク市の市場を歩いた。八百屋、食料品店、衣料雑貨店などが並ぶ。商品はそれなりにあるが活気がなく、店主たちの表情は暗い。
「一般市民には手の届かない金額になってきた」と誰もが口をそろえる。
戦闘で道路がたびたび遮断されるため、首都ダマスカスなど西部の都市からの輸送物資が届かなくなっているのだ。そのため隣国のイラクやトルコからの輸入に頼らざるを得なくなり、物価が高騰しているのだという。

街から人が減っている。生活困窮から多くの若者が隣国のトルコやイラクへ逃れている。(デレク市3月下旬撮影:玉本英子)

 

ガソリンの値段が4倍になり、輸送費がはねあがったというのも原因のひとつだ。シリアの家庭料理にはかかせないトマトも1キロ40シリアポンド(60円)が3倍に値上がりした。
衣料品店では水道会社で働くラファ・ラーディさん(27)が息子の服を探していた。だがTシャツの値段は6倍になり、結局買うことができなかった。

「物価が上がっても給料は変わらない。8500ポンド(約13000円)の月給では、家族4人をもう養えない。仕事が終わってから路上での野菜売りをはじめたが、いつまで生活できるか分からない」とラファさんは言う。
住民の多くは、安全と生活を求めトルコやイラクへ渡った。ラファさんも、1歳になる息子のミルクが買えなくなれば、イラクへ行くと話す。

長期にわたる内戦は、命の危険だけではなく、生活にも深刻な影響を与えている。
【シリア北東部ハサカ県デレク(アラブ名アル・マリキーヤ)  玉本英子】

 

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